グリーンピース・ジャパンの江島です。普段はファンドレイジング(資金調達)を担っていますが、本日は、ひとりの「プラごみ問題なんとかしたいけど何から始めればいいのかわからない」いち三鷹市民としてお届けします。

僕は東京都の三鷹市というところに住んでいます。三鷹市は東京のほぼ中央に位置していながら、緑が多く自然豊かで、文化や芸術ともゆかりの深い町。かの文豪、太宰治がこの町で「走れメロス」などを世に送り出したことでも知られています。

 

7月某日、そんな三鷹市の市議会が、自治体としてはめずらしく、政府に対して使い捨てプラスチックごみ問題についての意見書を出すと決定したとの情報が入りました。三鷹市が政府に意見書?何気に三鷹市ってがんばってんだな~と感じていました。

そんな僕に同僚のスタッフからこんなお声が。

「江島君、三鷹に住んでたよね?」

「はあ、住んでますが・・・」

「じゃあ、三鷹の市議会議員にインタビューしてきてよ」

「えっ、僕がですか!?」

僕は普段オフィスの中で勤務していて、外に出て誰かにインタビューなんてしたことがありません。ましてやお相手は市議会議員。ただでさえ人見知りの僕にはとんでもないハードルです。どうしよう。それにかくいう僕もまだまだコンビニコーヒーの愛好者ですから、いま問題視されているプラスチックストローを使う事もあったりするし、そんな僕がインタビューなんてしていいのだろうか…

 

 

 嶋﨑さんは、1970年頃より約29年間三鷹市役所に勤められ、その後三鷹の現職の市議会議員として活躍されています。なぜ今回の意見書提出を考えたのか、そこにはどんな背景があったのか伺ってみたところ、こんな答えが返ってきました。※以下、括弧内は筆者補足。

「(使い捨て)プラスチックは生産者(企業)が製造し、それを自治体が税金を使って処理しなければいけない(ような構図になっている)。なぜ?と疑問を抱きました」

「ごみ処理費用は莫大です。ごみを回収して、輸送して、燃やして…。本来であればもっと市民の生活を豊かにするために税金を使えるのに、それをごみ処理にもっていかれるのは不本意なんです」

一人ひとりが出すごみの量は少しずつでも、集まるとこんな大変な事に。(c)Greenpeace/岩崎撮影

なるほど…ごみが増えるというのは自然や町の景観を汚すだけじゃなく、自治体の懐も圧迫してしまうんですね。まだまだ嶋崎さんの怒りは止まりません。

「それに、つくりっぱなし、売りっぱなしじゃ無責任じゃないですか。拡大生産者責任*1が必要なんです。実際のところ、政府もこの責任制度を早く強化したいというスタンスでいると思います。」

※「拡大生産者責任」とは、製品に対する生産者の物理的および(もしくは)経済的責任が製品ライフサイクルの使用後の段階にまで拡大される環境政策上の手法。平たく言うと「モノを作ったらごみになった後の事までちゃんと面倒見ようね」ということ。

これには納得。何かをつくる以上、「売ったらあとは知らんぷり」じゃなくて、その後自然環境とか僕たちの暮らしにどんな影響が広がるのかまで気を配ってもらえたら、ごみの問題はもっと良くなっていくよなあと思いました。

 

三鷹に住んでて、よかった!

今年の6月29日、三鷹市議会は「全ての命を守るためプラスチック海洋ごみの発生抑制・削減を求める意見書」*2を賛成多数で可決しました。この意見書は国会と政府に対して、①海洋プラスチックごみの発生抑制のための法改正と財政措置、②国際社会との連携、そして③海洋プラスチックごみの現状と健康影響の調査・研究・対策を強く要望する内容となっています。

全ての命を守るためプラスチック海洋ごみの発生抑制・削減を求める意見書 賛成多数で可決 三鷹市議会  賛成多数で可決 反対は自由民主クラブの9人

全ての命を守るためプラスチック海洋ごみの発生抑制・削減を求める意見書


 プラスチックの誕生は人類に大きな文明をもたらし、私たちは生活をエンジョイしてきた。しかし、その影で海や環境に深刻な影響を及ぼし、生命への悪影響を与えていることに人類は気がついた。

 国際環境NGOグリーンピースの調査によれば、その影響は次のとおりである。

 「過去10年で製造されたプラスチックの量は、その前の100年間に製造された総量を超えています。プラスチックの大量生産による海の汚染は、気候変動や乱獲と並んで、海への最大の脅威の一つとなりました。 今では、海はあらゆる種類のプラスチックですっかり汚染されています。海に落ちたり捨てられたりした漁具、ビニール袋、ボトルキャップ、台所用品、吸い殻のフィルター、食品の包装材、ストロー、そして衣類に使われるマイクロファイバーや化粧品などに使われるマイクロビーズなどのプラスチックです。海の生き物にとってこうした大量のプラスチックごみが与える影響は悪化する一方です。

 海のプラスチック汚染が生き物に与える影響には、内臓の閉塞や漁網などが絡みつくなどの体の損傷のほか、酸化ストレス、摂食行動の変化、エネルギー配分の減少などの影響があります。

 プラスチックが自然に分解されるには100年から1,000年かかると考えられています。しかし海中では、微生物がプラスチックを分解することはありません。プラスチックは小さく砕かれるだけなのです。

 イルカや鯨など48種類の鯨類で、海洋ごみの経口摂取が確認されています。摂取されたごみのうち46%がプラスチックでした。ウミガメや9割の海鳥がプラスチックを食べると考えられています。プラスチックは海に流れ着きます。海洋ごみの6割から8割がプラスチックであると考えられ、影響は極めて深刻です。毎年1,270万トンものプラスチックが海に流れ込んでいます。」と。

 事態は深刻度を増しているが、アメリカ、インド、モロッコなどの国の幾つかの自治体では、完全にプラスチックを使用禁止、またはポリエチレンのような特殊な形でのプラスチックの使用を禁止することで、プラスチック汚染問題に制御をかけている。インドのカルナータカ州政府は、プラスチックの使用を完全に禁止した。サンフランシスコはプラスチックのレジ袋の使用を禁止した最初の都市となった(2007年)。さらに、2014年には、プラスチックボトルを市の施設内で使うことを禁止した。

 2015年、G7エルマウ・サミットにおいて、プラスチックごみによる海洋汚染が取り上げられ、海洋ごみ対策はグローバルな課題として初めて世界中の人々が認識した。2016年G7伊勢志摩サミットにおいても、海洋ごみの発生抑制及び削減に向けた対策を立てることが確認されている。にもかかわらず、2018G7シャルルボワ・サミットにおいて深刻化する海のプラスチックごみを減らすための数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」に、日米両国政府は署名しなかった。

 本市が収集するごみの総量は、2016年度4万7,694トン、内プラスチックごみは3,833トンである。容器包装リサイクル法を発生抑制(リデュース)、再利用(リユース)を重視した内容に早急に改正し、プラスチックボトルをガラス瓶に切りかえることを促進する必要がある。また、投棄されたプラスチックごみを回収する仕組みを早急に確立しなければならない。

 よって、本市議会は、国会及び政府に対し、下記のことを強く要望する。

                                                            記

1 容器包装リサイクル法を発生抑制(リデュース)、再利用(リユース)を重視した内容に早急に改正し、プラスチックボトルを代替品に切りかえることを促進すること。

2 海洋ごみの主要な発生源となっている河川について、国管理河川以外の河川管理者の厳しい財政状況に鑑み、国による新たな財政措置を含む発生源対策を確立すること。

3 「地域グリーンニューディール基金」のような市町村が迅速かつ機動的に活用できる海洋ごみ対策を推進すること。

4 海洋プラスチックごみについて、国際社会と連携してグローバルな視点から発生抑制及び削減に全力を挙げること。

5 マイクロプラスチックを含む海洋ごみの量等の実態を把握するための調査をさらに促進し、国民の生命だけではなく、全ての生命の危機回避するための研究を進め、対策を実行すること。

上記、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

提出者:嶋﨑英治
賛成者:大城美幸
反対討論:渥美議員(自由民主クラブ)
賛成討論:大倉議員(公明党)
採決結果:賛成多数……可決
賛成16(いのちが大事 日本共産党 公明党 民主緑風会
    希望と維新の会)
反対: 9(自由民主クラブ)
退席: 1(半田議員)

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